症例集

顔面神経麻痺(右側)(44歳/男性)

 

■現病歴

X年1月○日夕方から舌右側が麻痺し、、感覚異常。
医院にて、末梢神経の顔面麻痺と診断される。
翌日、右顔面がまったく動かなくなる。
投薬により経過を観察していたが改善が見られず、当院を受診した。

■顔面神経麻痺(ベル麻痺)とは

  • 顔面神経の麻痺によって障害側の顔面筋のコントロールができなくなった状態である
  • 顔面神経の運動神経線維が側頭骨の顔面神経管内を走行しているところで炎症を起こし、その結果管内の神経線維が圧迫されて神経の信号伝達がブロックされたり、神経障害が起こったりすると考えられている。
  • 顔のしわが消失
  • 閉眼が不十分となり、白眼となり、閉眼しようとすると眼球が上方へ回転するベル現象がみられる。
  • 口の片端(口角)が下垂して口笛が吹けず、食物も麻痺側の口角からこぼれたりする
  • パ行音の発音障害、低音聴力過敏や流涙、唾液分泌異常。
  • 舌の前方3分の2の味覚障害を伴うこともある。

【方法】

  • 五感とは異なる印知感覚を用いて、望診で気滞を捉え、気滞部分から切診で検出した強力反応点に鍼灸施術を行った。
  • 強力反応点の+点は、N極を左手に持ち、右手で切診を行い、右手が行く場所とした
  • 強力反応点の-点は、S極を左手に持ち、同様に右手が行く場所とした。
  • 望診により気滞部分を捉え、その部位から切診で検出した。
  • 強力反応点の+点に透熱灸、-点には灸頭鍼輻射熱遮断施術、または、+点はN極、-点はS極に磁化させた鍼(40ミリ18号鍼)の施術を行った。

【治療経過】

  • 3週間に10回の施術を行った。
  • 初診時に40点柳原法による顔面部位評価法では、スコア3点で完全顔面麻痺と判断された。
  • 4診目で瞬き可能となり、口周の筋肉も動かせるようになった。
  • 8診目でスコアは満点となり、改善が認められた。

【考察】

  • 本症例では麻痺側とは反対側の頭部に気滞が発現していた。また、強力反応点についても、必ずしも同側ではない位置にも発現していた。
  • 強力反応点に適した鍼灸施術を行った結果、気滞、強力反応点が解消し、麻痺や随伴症状が消失したことから、強力反応点+点および-点に適した鍼灸施術は、臨床的に有効であることが示された。

【結語】

  • 顔面神経麻痺は、現代医学ではステロイドを投薬するのが一般的であるが、薬物治療を併用するか否かは問わず、強力反応点・気滞を消去すれば、症状は改善に向かうと考えられた。
  • 今後、症例を蓄積して、有効性を検討していきたい。