脊柱管狭窄症による背中の痛みへの鍼灸治療の症例

《脊柱管狭窄症とは》

脊柱管とは、椎骨が連なってできたトンネル状の管のことで、そこに神経(神経根や馬尾)が通ります。

この脊柱管が狭くなり神経が圧迫されると下肢に痛み、痺れがでたり長距離を続けて歩く事が出来ないなどの症状が起こる疾患です。

 

原因としては、

 ▽加齢に伴う骨や靭帯の変形、変性

 ▽腰の疾患(椎間板ヘルニア、脊椎すべり症、圧迫骨折、側弯症、先天的に脊柱管が狭いなど)

 ▽腰に負担がかかる作業を長期間続けている

 ▽肥満

などが原因とされています。

特に、50~70歳代といった中高年に多く発症するとされています。

また、他にも喫煙糖尿病ストレスなどの関与も報告されています。

 

特徴的な症状として、坐骨神経痛間欠跛行(かんけつはこう)があります。

 ・坐骨神経痛とは、腰殿部から太もも裏、ふくらはぎ、足先にかけて枝分かれしながら走行している神経で、腰椎や殿部の筋肉などにより神経が圧迫された際に、腰殿部から足先にかけて痛み、痺れなどが起こることです。

 ・間欠跛行とは、脊柱管が狭くなっているため、歩行の際、歩き始めてから時間が経つと、神経が圧迫され下肢に痛み、痺れなどが出現し歩けなくなるが、しゃがんだり、前かがみの姿勢で一定時間休憩すると神経の圧迫が解放され再び歩けるようになる、と言った状態を繰り返す歩行のことです。

 

他の症状としては、 

 ・腰痛

 ・筋力低下

 ・排尿、排便障害

 ・会陰部の痺れ、灼熱感

などがあります。

症状が進行すると、姿勢にかかわらず下肢の痛み、痺れが出現したり、歩行困難、手指の細かい動きが困難になると言った症状が出現します。

 

 

《症例》

〇70代 女性

〇脊柱管狭窄症による右の背中の痛みで来院。

 去年3月頃に坐骨神経痛が半年ほど続いた。(来院時には治まっていた)

 坐骨神経痛は酷くなったり、治まったりを繰り返していたが、今年2月に入ってから背中の痛みが出現。

 眠れないほどの痛みだったため、病院でレントゲンとMRI検査を受けると、脊柱が横に歪んでいると言われた。

 座っているときは痛みは無いが、トイレなどで立ち上がり行って帰ってくると痛みが出る。

 上向きに寝るのも痛く、前かがみが一番楽。

 ここ2ヶ月家から出ていなかったが、痛みが治まったため買い物や植木の木を切ったりするとまた痛みが出だした。

 去年からペインクリニックで注射打ってもらっているが、痛みは変わらず良くなっていない。

 34歳ぐらいの時に脊椎2か所骨折しており、腰が楽になるため、プールに30年ほど通っていた。

 

〇鍼治療の経過

 今回の治療では、背中の痛みでベットに横になれなかったため座位のまま施術し、

  ・右京骨

  ・右太渓

  ・右腰腿点

 へ治療を行った。

 次の来院時では、痛みは変わっておらず、鍼治療後から痛みがあった。

 腰殿部のトリガーポイントの鍼治療もプラスして継続的に治療を続けていくと、

 右背中の痛みが徐々に緩和していき、最初は座位で治療をしていたが、今では伏臥位や胸当てを背もたれにした姿勢の仰臥位での治療が出来るようにまで改善した。

 また、右膝を伸ばすと膝裏に痛みが出るため真っ直ぐ伸ばす事ができなかったが、治療を続けることにより膝裏の痛みはマシになり、膝を少しずつ伸ばせるようになっている。

 現在では、右背中の痛みは無くなっており、痛みで歩いたりするのが辛かったのが、噓みたいだ!と仰られている。