起立性調節障害、体位性頻脈症候群への鍼灸治療の症例

《起立性調節障害とは》

起立性調節障害とは、自律神経の働きが悪くなり、起立時に体や脳への血流が低下する疾患です。

特に、小学校高学年から中学生(思春期)の子どもに多くみられます。

思春期では、体や心が子供から大人へと変化・成長していく時期でもあり、自律神経が乱れやすくなるため起こりやすくなります。

 

主な症状として、

 ▽朝起きれない

 ▽全身の倦怠感

 ▽立ち眩み

 ▽めまい

 ▽頭痛

 ▽動悸、息切れ

 ▽夜寝付けない

 ▽食欲不振

などの症状がみられます。

 

これらの症状は、特に朝起きられず、午前中体調が悪く午後からは体調が回復すると言った特徴があります。

そのため、朝起きられず、学校を休んでしまうと言ったことが起こりやすくなります。

 

発症しやすい人の特徴としては、

 ●朝が苦手

 ●よく立ち眩みをする

 ●低血圧

 ●小食

 ●真面目で責任感が強い

 ●周りに気を遣いすぎる

 ●日頃からストレスを受けやすい

などがあり、上記に当てはまる人は、自律神経が乱れやすい傾向にあります。

 

また、起立性調節障害には4つの種類があります。

 〇起立直後性低血圧

  起立直後に強い血圧低下や血圧の回復の遅れがみられる。

 〇体位性頻脈症候群

  起立中に血圧低下を伴わず、著しい心拍数の増加がみられる。

 〇血管迷走神経性失神

  起立中に突然血圧低下、起立失調症状が出現し、意識低下や失神発作がみられる。

 〇遷延性(せんえん)起立性低血圧

  起立直後の血圧、心拍数は正常だが、起立してから数分経過すると血圧低下がみられる。

 

特に多く見られるのは、起立直後性低血圧で、次に、体位性頻脈症候群が多く、

血管迷走神経性失神、遷延性起立性低血圧と診断される頻度は稀です。

 

また、大人でも起立性調節障害になることもあります。

症状は、上記と同じで特に変わりはありません。

しかし、大人で起立性調節障害になる原因としては、仕事によるストレス生活習慣の乱れ睡眠不足などにより自律神経が乱れることにより起こりやすくなります。

他にも、糖尿病、高血圧、パーキンソン病、アルツハイマー病などの疾患により自律神経が乱れることで起こることもあります。

そのため、軽い運動やストレッチをしたり、自分に合ったストレス発散方法でストレスを軽減し生活習慣を整え、自律神経の乱れを予防することが大切になります。

 

 

《症例》

〇10代 男性

〇初診日 7/13

〇小学校6年生の梅雨時期から朝起きれない症状が出現。

 1週間ほど続き、学校も1週間休むと朝起きられない症状は治った。

 中学1年生の梅雨時期に朝起きられなくなり、1週間学校を休んだ。

 その後も、時々起こっていたが気付いたら治っていた。

 しかし、今年5月に朝起きれない症状が出現し、今までと同じ様に勝手に治ると思っていたが、症状が酷くなっている。

 最初は血圧が低い感じだったが、今は血圧は低くない。

 頭を上げるとしんどくなり、脈も速くなる。

 夜になると体調は回復する。

 最近は、回復するのも遅くなっていて、学校にも行けていない。

 常に倦怠感があり、ぐったりしてる。

 お昼を食べるとしんどくなることがあるが、時間が経つと治る。

 休日は朝から動けることもある。

 急に体が熱くなって、汗をかく事もある。

 病院で、起立性調節障害の検査で、10分間立った時に、足に血が溜まって真っ赤になった。

 6月頃から整体に週1回で通っているが、体調良くなったり、しんどくなったりする。

 7月末にある部活のコンクールに出場したいためそれまでに体調を戻したい。

 部活では、部長をしていてプレッシャーを感じてる。

 

〇治療の経過

 今回の治療では、

  ・気海

  ・左内関

  ・両太渓

  ・両脾兪

  ・両腎兪

  ・腹部打鍼

 へ治療を行った。

 2回目の来院時では、治療後から朝起きれる時間(体調回復する時間)が少し早くなった。

 起き上がった時の動悸や脈は前回よりも早くはない感じになっていた。

 3回目の来院時では、午前中しんどく、お昼には回復してご飯も食べる事ができていたが、全体的に倦怠感があった。

 その後も治療を続けることにより、朝起きられない時間が短くなっていき、部活にも参加できるようにまで回復した。

 7月末のコンクールにも朝から最後まで参加する事ができ、とても喜ばれていた。

 「朝起きれないしんどさは最初に比べると全然マシになっている✨」と仰っている。