顔面神経麻痺への鍼灸治療の症例

《顔面神経麻痺とは》

顔の筋肉を動かす顔面神経が何らかの原因により障害され、顔の動きを低下させる病気です。

顔面神経麻痺は、朝起きたら顔が動かない、鏡を見たら顔が曲がっていた、というように急に生じる場合が多いのが特徴です。

 

顔面神経麻痺が起こる原因は、主に2つあります。

「ベル麻痺」と、「ハント症候群」です

「ベル麻痺」は、顔面神経麻痺の中で、最も多く、約60%以上を占めています。

原因として、単純ヘルペスウイルスが関与しています。

単純ヘルペスウイルスが神経に炎症、むくみを引き起こすことで発症します。

症状は、片側の顔面神経麻痺のみです。

 

「ハント症候群」は、水疱瘡のウイルスである、水痘帯状疱疹ウイルスが再活性化することが原因です。

ウイルスが再活性化する原因は、疲れやストレスなどにより、免疫機能が低下することが関係しています。

ハント症候群は、ベル麻痺の次に多く、約20%を占めています。

症状は、顔面神経麻痺側の耳が赤く腫れ、水疱ができたり強く痛みが出たり、難聴、めまいなどがあります。

 

ベル麻痺とハント症候群で出現する同じ症状としては、

 ・顔の半分が思うように動かない

 ・目を閉じることができない

 ・唇の端が垂れ下がる

 ・口から水がこぼれる

 ・口笛を吹くことができない

などがあげられます。

 

また、顔面神経麻痺は、重症度を評価する事ができ、柳原法(40点法)を用いて行います。

この評価法は、安静時の左右対称性と、 顔面神経の各部枝を考慮した9種の表情運動の10項目を

「ほぼ正常 (4点)」 「部分麻痺 (2点)」「高度麻痺 (0点)」 の3段階で評価するものです。

表情運動には、

 ∇額のしわ寄せ

 ∇軽い閉眼

 ∇強い閉眼

 ∇片目つぶり

 ∇鼻翼を動かす

 ∇頬をふくらます

 ∇口笛

 ∇イーと歯をみせる

 ∇口をへの字にまげる

があります。

これらの評価のうち、40点満点中

10点以上を不全麻痺8点以下を完全麻痺、 あるいは20点以上を軽症、 18~10点を中等症8点以下を重症と評価します。

36点以上で中等度以上の病的共同運動 (口を動かすと一緒に目が閉じてしまうなどの症状) のないものを治癒と判定します。

 

顔面神経麻痺では、急性時に治療を始めることで、症状の改善が見られますが、個人差がございます。

麻痺状態が長期間続くことで後遺症として残る場合があるため、発症後はすぐに病院で検査、治療を行うことが大切です。

 

《症例》

〇40代 女性

〇主訴:顔面神経麻痺、側弯症

 ・10月中旬に顔面神経麻痺(左)を発症

 ・歯磨きをしていて、口から水が漏れてきて気付いた

 ・発症する2週間ぐらい前から首に痛みがあった

 ・特に左の頭の付け根辺り

 ・首が痛くなってから、僧帽筋辺りが張っている

 ・予定が詰まっていて忙しかった(睡眠の質が悪かった)

 ・目をつぶるのと、食べるときに口を大きく開けるのが難しい

 ・目が乾く

 ・病院では、1週間ほどステロイドの点滴をした

 ・点滴をしても少し強張りが緩むほどであまり症状の変化はない

 ・側弯症は、思春期の時に病院の先生に言われた

 ・時々腰が痛くなる

 

〇治療の経過

 今回の治療では、

  ・両合谷

  ・左足三里

  ・右三陰交

 へ治療を行った。

 2日後の問診時では、来院する前日からステロイドの副作用なのか、体がとてもしんどく、頭痛も出現していた。

 頭痛は、特に左後頭部にあり重だるい痛みがあった。

 また、左耳に水が溜まっているような感覚も出現していた。(病院では耳に水は溜まっていなかった)

 左目は少し閉じやすくなた。

 その後も、治療を続けることにより、左首から肩にかけての痛みや、頭の重だるさが改善された。

 また、左顔の引きつり、口の歪み、口から水がこぼれるなどの症状の改善もみられ、

 「お陰様で顔が動かしやすくなり、不便さが減りました✨」

 と仰られていました^^