病体からの情報で、五感では感知できず、印知感覚だけで把握できる情報を基に治療を行う診療です。

鹿児島の内科医である故有川貞清先生によって提唱された東洋医学で、この治療の最大の特徴は、訓練によって五感以外の感覚を身につけた施術者が体を診るだけで診断することです。
これを「印知」と言います。
五感以外の感覚「印知感覚」を使って診ることで、人体の気の流れの滞りを見つけ、その滞りを治すのに最も効果的な反応点を利用して治療を行います。
その反応点に体が必要としている刺激を与えることで、最小の刺激で最大の効果を起こし、体が自然に治癒の方向に向かっていきます。

玄武堂では、この刺激を主に鍼灸で行います。
この治療の目的は、人間が元々持っている治る力 (自然治癒力) をうまく働ける状態にすることです。 体全体を診てその不具合を調整し、自然治癒力を復活させるように促します。病気の手前の状態 (未病) の治療や、原因がはっきりしない症状にもまた、病気にならないようにする予防の治療にも効果が期待できます。

たとえば高血圧を例にとって考えてみます。

高血圧に対して対応するツボに、鍼を刺すことによって鍼灸では高血圧を改善することができます。
具体的には、手足(四肢末梢)の循環を改善させるとともに、自律神経機能を調整し、血圧の低下と血圧変動の安定化をはかります。
ですが、高血圧の中には内臓からの影響によって起こっているものも存在します。
その場合、本当の原因を改善しなければ、またしばらくすると高血圧は再発することになります。
始原東洋医学の治療ではその人の持っている治る力を使って治すので、初期の間は効果があまり感じられないこともあります。
しかし、回数を重ね3~4回の治療をしていくと、徐々に目に見える効果となります。
体が治癒の方向に向かっていることを実感できるようになるのです。
高血圧ならば、ただ単に血圧を下げることだけを考えるのではなく、そもそも高血圧がなぜ起こるのか、その原因を考え、そんな体に変えてゆくことを目的としているのです。

上記の高血圧ひとつとっても、自然治癒力という観点から見ると、高血圧の症状そのものに意味があり、ただ血圧を下げることだけがいいということではない、ということが解ります。
例えば、高血圧は、体の隅々まで血を巡らすために起こっています。
ですが、高血圧が長く続くと脳血管障害や心臓疾患などになることから「サイレントキラー:静かなる殺人者」と呼ばれています。
血圧が高いまま放置しておくと、心臓疾患や脳の血管が詰まったり、破れたりして脳卒中が起こります。
したがって、できるだけ早く血圧を下げ危険な合併症にならないようにすることが重要です。
始原東洋医学の治療では、気の滞り (気滞) が取れれば体は自然に治ってゆくと考えているため、たとえ気滞が取れていても、その段階ですっきりしない症状があるならば、その症状をあまり無理に取らないほうがよいと考えます。
例えば、血圧を下げるだけならば血圧を下げる薬を飲んでいけば、簡単に血圧は下がります。
ですがこの場合、薬がきれれば高血圧は再発します。
それだけでは、症状を抑えているだけで治癒には繋がっていません。
自然治癒力が働いて、結果として高血圧も改善される状態が一番のベストな状態ですが、患者さん個々の体の状態・病態があるので必ずそのようになるとは限りません。
自然治癒力が働いて結果、血圧も下がったことと、ただ一時的に血圧が下がったこととは、意味合いがまったく違うのです。
治癒に向かわせるという目的のためには、自然治癒力に働きかけることが早道だということは、言うまでもありません。